今、バンコクにほど近いサムットプラカンにある喫茶店にてこれを書いている。夕方になって突然に雨が降り出した。まさにタイの雨、南国の雨を思わせる雨であった。外には大粒の雨がドシャドシャと地面に降り注ぐ音がしていた。
これからこの喫茶店の近くにある市場に行って夕飯の買い物をしようと考えていた。この素晴らしくオシャレな喫茶店の店内にいる限り、外の大雨は全く気にならなかったが、東南アジアという場所は突然の大雨とは無縁ではいられない場所であると思ったものだ。
これを書きながら、折り畳み傘をカバンの中に入れてくるのを忘れてしまっていた。今回のタイでの滞在において折り畳み傘は途中で購入していた。あれはプラトゥナームであった。やはりあの時も突然に雨が降ってきて、仕方がなく折り畳み傘を買ったのだ。プラトゥナームというのは観光客が多く集まるところだから、雑貨屋で売られていた傘は最初、「250バーツ」と言われた。
幾ら何でも高い気がした。物価が上がっているタイとはいえ、高い気がするのだ。そうして、私が店を後にしかけたところ、店の女店員が、別の折り畳み傘を提示してきた。そちらは150バーツであるという。安い方は傘の柄の部分が長いので安くなっているらしい。
当然、傘の大きさや重量のことを考えたら高い折り畳み傘の方がいいかと思いつつも、私は安い方の150バーツの傘を買うことに決めた。
その傘を今日は忘れてしまったのだ。部屋の中にあったところまでは覚えている。そして、傘をカバンに入れなきゃなと思ったところまでは記憶している。まあ、こんなことはよくあることに違いあるまい。
そんなわけで私には傘が無かったものだから、この喫茶店が閉まるまでのあと30分間ほどは何とか時間をやり過ごす必要があった。30分間で雨の降りかたにいかほどの変化が見られるかわからないが、待っていた方が良さそうだ。
ラオスにいたのはあれは3ヶ月ほど前のことであったが、ラオスの雨は明らかにその降りかたにタイとの違いが見られるようである。
すなわち、ラオスの場合、雨は降るには降るが、夜中にドバッと降って、朝には止んでしまうことが多い。一般の人々が活動をする日中の時間帯に、雨に悩まされることが少ない。
もちろん、長くラオスに滞在していれば日中に雨に降られることもあるだろうが、うーん、確かに、夜中に雨が降るということは私の少ないラオス滞在においても多かったようである。
夜中に目が覚めたりなどすると、外では大雨が降っている音がすることに気が付いた。慌ててベランダに干してあった洗濯物を取り込んだりもした。その頃、私はタラートサオの近くにあるボロボロの老朽化したビルにて、その中にある会社の寮に住んでいた。
安普請の建物ではあったが、なぜかベランダは広くて立派に見えた。ベランダの塗装などはところどころ剥げ落ちていて見窄らしいものがあったが、とにかくスペースは広かったので、洗濯物を干すのはとても余裕があってよかった。
記憶の糸を辿りながらこれを書いている。現在いるタイの雨はまだ完全には止みそうも無い。少しは雨音が静まったようではある。