とある本に、早朝出勤のススメが書いてあった。早朝出勤すれば、上司からたいした者だという評判を勝ち得ることが出来るということであった。早朝出勤で会社における自分に対する人物評価を上げよう!みたいなメッセージだったと思う。
元来、私は生真面目な類型に属する人間だったので、早朝出勤のような愚直さを要求されるような類の頑張りに対して、あまり労せず実行に移すことが出来た。
通常の業務開始よりも30分以上も前に出社するわけだ。自分のほかには誰も出社している人はいない。部屋の電気を点けたり、ブラインドをあけたりした。事務用のハンコの日付を変更したりもした。そういう真面目な姿勢を見せれば、当然上司や周りの人々の評価はアップするだろうと踏んでいたのだ。
ところが、いくつかの会社で早朝出勤を実践したけれども、正直、その効果というのは殆ど無かったと今は分析している。
早朝出勤をしたからと言って、それだけで会社での居心地がよくなるわけではない。単に、真面目な人という印象を周りに与えるだけであろう。真面目さや誠実さは買われるだろうが、それで会社の人々との人付き合い、コミュニケーションを免除されるわけではない。
早朝出勤をするよりか、周りの人々の懐に飛び込んでいくような人間の方が会社で重宝されたりもする。早朝出勤だけで、普段はムスっと仏頂面であり、冗談や軽口の一つも言えないような人間は疎んじられて、挙句の果てには早朝出勤をしているというプラス面でさえも、「彼奴は真面目なだけでつまらない奴だ!」みたいな評価さえもらい兼ねない。
こうなってくると早朝出勤というのは百害あって一利なしとさえ思えてくる。
では、始業時間ギリギリに出社していればいいかというと、筆者の場合はそれだと何となく落ち着かない。とくに新人のときはそうである。
何が言いたいかといえば、要するに物事はバランスが大切だということだ。とくに日系企業の場合、中庸で目立たないタイプが好ましいとされているようだ。何事も無難にこなさないといけない。
それにしても、出社時間をどうするかということについて、こんな風に頭を悩ませないといけない日系企業に勤務するのもかなり大変なことだ。日本の会社は相互監視社会の程度が強いものである。出る杭は打たれるとはよく言ったものだ。