タイ語をやっていると英語の発音が悪くなる気がする

この問題について正面からあまり考えたく無いのだが、タイ現地採用をやっているとどうしても直面する問題なので、あえて記事にすることにする。

それは言語の問題であり、タイ語の話である。

タイで現地採用に挑む場合、タイ語の習得を目指す人は多いかもしれない。中には社内公用語が英語というタイの会社もあるだろう。特にIT系の会社などはタイ語が話せなくても、社内にいるタイ人は英語が流暢に話せるので、コミュニケーションには支障が生じないというケースなどもあろう。

しかし、多分、自らの意志でタイに来て、タイで現地採用をやっていこうという人の場合には、やはり、タイ語をマスターしたいという人が多いのでは無いか。

かくいう筆者の場合には、タイ語学校には1年ほど通って、それ以外は独学やら、タイの職場での実践を通してタイ語を学んだ。タイ語に費やした年数は相当になると思うが、別に自分はタイ語がうまいとは思っていない。それとともに、まあ、仕事や日常生活では特に困らないだけのタイ語は使えている。

そのような状況ではあるが、タイ語をまあまあ使えるようになった過程において、非常に気になることがあった。それは、タイ語というものが英語とかけ離れている言語であるから、タイ語を学ぶことによって、英語のレベルアップだとか、相乗効果などは一切期待できないことだ。

それどころか、タイ語の発音に注意していると、今度は英語の発音が悪くなっていく気がする。英語には各単語に固有の音やアクセントがあるが、タイ語の声調に慣れてしまうと、英語を発声するときにアクセントが疎かになったりする。

アクセントの話でいうと、例えば、タイ語でコーラ(コカコーラのコーラ)と発音すると、語尾の声調がコーラー!となる。(上がり調子で発音)

で、タイ語の場合、外来語がほとんど全て、この上がり調子のイントネーションになるようだ。

タイにいてタイ人に対しては、この上がり調子の発音で発しないと通じないから、あらゆる場面においてタイ式の発音になってしまうのだ。

この発音の癖というものが身体に染み付いてしまうのは中々厄介なことだと思うのだ。

筆者の場合、ベトナムでも就労の経験があり、ベトナム人の英語というのはタイ人の英語ほど癖のあるものでは無い。割とすっきりとした英語を話す人がベトナム人には多いように見える。

そういうわけで、タイ語をマスターしようと躍起になって、ひたすらタイ語の習得に勤しんでいると、後になってさて英語でも勉強しようかという気分になったときに、タイ語の癖を矯正するのが難しくなるということであった。

何か一つの外国語ばかり日常的に話していると、2言語目、3言語目とスピーキングの言語を増やしていったときに、どうしても1言語目の外国語が優先されてしまう。外国語を身体で覚えたということだろうからそれはそれで良いことであるが、タイ語というのは英語とはかけ離れたシステムに属する言語だということは認識しておいて損はないことだろう。

あと、現地採用の仕事上のキャリアという側面で考えたときに、特にタイ語は話せなくても大丈夫というのは肌感覚としてずっとある。かなり怪しいブロークンなタイ語であってもタイの職場で働けるものである。それから、世間から評価されるのはタイ語ではなくて、英語であることも多い。要するに、現地語が全然話せなくても、英語がバリバリに話せて、英語を自由自在に使いこなせる方が日本人からも現地人からも高い評価を得られやすい。

これに関しては筆者は個人的には残念に思ってしまうことだ。なぜなら、タイならタイでせっかく現地の言葉をマスターしようと努力したのに、現地のタイ人からはあまり評価されず、その一方で現地語には一切の関心を寄せようともしない、タイ語など一時間も勉強したくないという英語を話せる日本人の方が高く評価されてしまう。

もっと平たく言うと、英語が話せる方が現地人からは「教養がありそう」、「頭が良さそう」と言う風に、ミーハーな見方をされると言うことはあるはずだ。

こうやって考えていくと、現地採用をやっていく上で、どの言語に力を入れて勉強していくべきか、また、勉強している言語をどれくらいまでの高みを目指してやっていくかと言うのは、戦略的に考えなくてはいけないことだと思う。