仕事なんぞもらいにいかなくてもよかろうに

もう二年ほど前の話になるけれど、日本は中部地方のとある片田舎にある工場で働いたことがあった。そのときに直属の上司が言っていた言葉ですごく印象に残っているものがある。それは、、、

「仕事をもらいにいかないといけない!」

というものであった。

どういう意味かというと、会社で働くということは、上司からあれしろこれしろという指示をただ待つだけではなく、自分から積極的に動いて周囲の人から仕事を分けてもらうようにしなければならない、ということである。

言っている意味はもちろんよくわかる。

しかし、ひどく社畜的なフレーズだよなと思う。「仕事をもらいにいく」、か。

別にこちとらにしてみれば、仕事などもらわなくても構わない、というか、仕事せずに金をもらえた方が得であるから、会社で働いているなら仕事をもらわない方が良い。

そんなことを考えていたのだけれど、私と同じように考えるような人間はその工場では皆無のようであった。「仕事を積極的にもらいにいく」ような人間ばかりだから、なるほど、大変効率よく工場の運営も行なわれているのだろう。安い賃金で喜んで働くような人ばかりなのだ。

これまでの職業人生において何度か社畜的なフレーズに遭遇したことがあった。前に聞いたのは、「会社には稼ぎに来ているんだからな!」と言っていたおっさんのセリフ。

これも非常に違和感が大有りであり、会社には「金をもらいに来る」というのが筆者的には正しい。

そして今回の「仕事をもらいにいかないといけない!」だけれど、まあ、ご苦労さんなことだ、やれやれという感じである。

仕事をもらいにいくというのは、ともすると「他人の仕事を奪う」ということにもなりかねない。だが、仕事をもらいにいくという言葉の裏には、「頭を下げて、どうにか仕事を分けてもらう」というニュアンスがありそうだ。

その辺りに日本の会社内での複雑なコミュニケーションの仕方が露呈している。