タイ人との社交について考えたこと

失業して職探しをしている間というのは会社に行かない分だけ精神的には楽なのだが、唯一というか厄介なことも生じていた。

それは、アパートの管理人さんから、「何で平日の昼間なのに会社に出かけないのか?」みたいなことを質問されたり、疑わしげな眼差しを浴びることであった。

その管理人さんとは以前から会えば親しげに会話を交わしていた。管理人とはコミュニケーションを密に取って普段から良い関係を築いておくというのがタイローカルアパートに住むときの鉄則だろうとは思っていた。

確かに仲良くはなったが、タイ人に関して厄介だと思うのは、一度親密になると割とこちらのパーソナルなスペースまで気にせずに侵入してこようとすることだ。

店子が失業して職探しをしていようが、平日からブラブラしていようが彼らには関係無いだろう。それでも彼らは好奇心を丸出しにして、こちらのプライベートまで探って来るわけだ。

また、タイぐらいの発展レベルの国だと、「普通の大人は会社で働くのが当たり前」という常識以外について想像力が一切働かないと思う。

平日にブラブラしている人だったとしても、金利生活者だったり、宝くじに当たったり、起業していたり、親が金持ちで遺産を譲り受けてブラブラしていられるとか、、、色々な事情があってもおかしくないはずだ。

それなのに、おそらく一般的なタイ人にとっては、そういうことまで慮って想像することは難しいのである。

世間一般の常識の範囲を超えて、あらゆることを議論するのが難しくなってくる。

こういうことはたとえば、「中年以降になって結婚しないでいる」というようなことにも当てはまって、筆者が結婚せずに独り者でいると、たいていのタイ人というのは、「何で結婚しないのか?子供はいないのか?結婚したくないのか?このまま独身でいて将来、年をとってから寂しく無いのか?」などなど、余計なお世話の忠告のオンパレードである。

彼らにしてみれば、世間のヒソミに倣って、世間並の結婚をして、子供を拵えて、子育てをしていって、働いて賃金を得て行くみたいのがスタンダードな考え方だし、そこから逸脱しているような考え方の持ち主はひどく奇異に思われるようなのだ。

その辺りがタイの限界かなとは思っている。つまり、タイ人とは深い話をするのが難しい。外国留学などして考える訓練をして、それなりに勉強をしてきたような人はまた別かもしれないが、基本的には常識の範囲外に出ることを、思想面でも、行動面でもひどく嫌うようである。

タイ人とうまくやっていこうと思ったら、とりあえず微笑みを絶やさずに、あんまり難しい捻った笑いなどを披露したりせず、万人受けしやすい冗談などが言えたら及第点である。

そうやって、タイ社会には深入りせずに、表層の部分だけで生きて行くようにすれば、タイというのはやはり非常に暮らしやすい場所だろう。物価はまだまだ安く、その割には暮らしに便利なものが揃っているからである。