土日はずっと家に籠っていた。家を出て郊外に行って散策すれば確実に金を使うことは分かっていた。それに、ホーチミンの厄介なところというのは、大気汚染がひどいので街歩きが楽しめないところだ。こちらに来て最初の頃はそれなりに街歩きも珍しく感じられたが、たいていのパターンは見た気がするので、こうなると涼しいアパートの自室に籠っているのが一番快適ということになる。
ただ、ふと今日、レタントンを歩いていて思ったが、ホーチミンの郊外でアパートを借りて暮らすのはどうだろうという想像であった。ローカルに密着した暮らしになればベトナムの真の姿に迫れるだろうか。食費を中心とした生活費全般はかなり安くあげられるだろう。ベトナム語をいよいよ勉強しなければならなくなるか。
レタントンは便利ではあるが、生活感があまり無い。昼間でも通りを歩いていて按摩の呼び込みがうるさい。来た当初はその類の呼び込みにさえ風情を感じていたのだが、いまはもう鬱陶しいだけになってしまった。アパートの玄関扉をあけて、水商売に従事していると思われる女性が通り過ぎる。その刹那にプウンと、安香水と体臭の混じった嫌な臭いが鼻をかすめる。夜中に相当酔っぱらっていたら、そうした臭いでさえもエキゾな魅力を湛えるんだろうけど。